【プロジェクト紹介】現場の声をもとに、多様化する社会で“誰もが働きやすい”職場づくりを考える
こんにちは。ツナグムの並河です。
ツナグムでは主に、京都府内各地への移住促進に関するプロジェクトに携わっています。本日は、2023年12月〜2024年3月(R5年度)に実施させていただいた亀岡市の移住・定住施策に関するリサーチプロジェクト並びにセミナーの様子をご紹介したいと思います。
<プロジェクトの概要>
●事業名
若者の仕事場づくりプロジェクト
●事業期間
2023年12月〜2024年3月
●担当者
並河
●クライアント
亀岡市企画調整課 SDGs・企画推進係(旧:SDGs創生課)
●外部パートナー
一般社団法人公共とデザイン(リサーチ設計・研修ツール制作ディレクション)
中家 寿之さん(グラフィック・デザイナー)
戎多麻枝さん(ワーク&ライフキャリアコンサルタント)
職場内に存在する“見えづらい”課題を発見する
現在、亀岡市では人口減少対策として移住・定住人口の増加を掲げており、令和3年度に取り組んだリサーチをもとに子育て世帯に向けた移住促進サイトを制作しました。令和5年度には「若者の仕事場づくりプロジェクト」の一環として、まずは女性の働きづらさに焦点を当て、ジェンダーギャップや女性特有の健康課題について理解を深めるため、亀岡市内の企業で働く、あるいはこれから働く可能性のある女性12名にグループインタビューをさせていただきました。
ヒアリングから抽出した課題に対して地元企業が理解を深めるきっかけをつくり、解決に取り組むことで、働きたい・働きつづけたくなる魅力的な職場づくりを推進し、将来的な移住やUターンを促すことを目的としています。
今回は、解決したい課題に向けてどのようにリサーチを進めていくか、パートナーの一般社団法人公共とデザイン、亀岡市との打ち合わせを重ね、ライフステージやキャリア観が異なる女性のみなさんにグループインタビューをご協力いただきました。
グループ1:就職や転職等を経験している方
生理をはじめ、女性特有の健康課題、キャリアアップとジェンダーギャップについてなど、現在・過去に働きながら感じている課題や、職場に求める対応など
グループ2:育休を取得している最中の方
育休取得前の職場環境や、育休から復帰する際に感じている不安とその理由について、どういう職場であれば復帰したいと思えるか、現在考えている選択肢(復帰・退職・転職)など
グループ3:子育てをしながら働いている方
どのように日々の業務と子育てを両立させているか、あるいは両立させようとするなかで課題に感じていること、職場からどのようなサポートがあると良いか、キャリアアップについてなど
グループ4:就活がはじまったばかりの大学生
学生生活、インターンシップや就職活動において感じているジェンダーギャップはあるか、就職する前に企業に対して抱いている不安や期待、「こんな会社に就職したい」というイメージなど
インタビューでは、「生理で体調が悪いときに男性上司に生理休暇を申告するのが憚られる」「男女という性差で仕事の役割が決まり、賃金格差にもつながっている」といったジェンダーギャップの課題や、「子育てをしながら働く上司がおらず理解が得られにくい」「育休から復帰後、時短勤務をしていることで上司からの評価やスキルアップの面で不安を感じる」といった子育てとキャリアを両立することの難しさ、「制度面は整っているが、実際に休むとなると周囲に対して負い目を感じてしまう」という声が挙げられました。
想像と対話を促す「演劇」要素を交えたゲーム感覚の研修ツール
ヒアリングを通して、さまざまな“見えづらい”課題が発生している職場において、まずは企業の方に職場内の課題を把握・改善する必要性について感じていただく必要があるとプロジェクトメンバーは考えました。
チェックリストのように「これが課題だから改善しなければならない」という一方的な押し付けをするのではなく、企業ごとに就業規則や職場環境が異なるなかで「これまで課題だと認識できていなかったことがそもそもあった」「こうした課題に対して自社だったらどう対応できるか?」など、それぞれの立場から課題への向き合い方を見つけていただくことに重きを置いたツールキットの制作を目指しました。
ライフステージごとに作成したお題カードには、ヒアリングで聞き取った課題をもとにしたエピソードや会話文が記載されており、プレイヤーは人物カードに書かれたパーソナリティを演じながら発言をしていくゲーム感覚のツールとなっています。親(カメ)はどのプレイヤーの発言がよかったか、あるいは与えられた役を演じきれていたかという観点からフィードバックとともにポイントを配ります。
プレイヤーとしてポイントを集めていくことはゲームとしてのおもしろさですが、終了後の振り返りを丁寧に行っていただくため、印象に残ったことや自社でできるアクションを考えていただく時間を設けています。
地元企業のみなさんにも協力いただいてテストワークショップなどを開催しながら、実際に自社で取り組む際に課題になりそうなポイントなど、いただいた感想やフィードバックをもとにツールの改善を行いました。
子育て・ミレニアル・Z世代から選ばれる職場づくり 多様化する社会で“誰もが働きやすい”職場とは?
3月21日に開催したセミナーでは地元企業を対象に、ワーク&ライフキャリアコンサルタントの戎多麻枝さんをお招きして「多様化する社会で“誰もが働きやすい”職場とは?」をテーマにお話いただきました。
今回は、リサーチの内容とも重ねて、ミレニアル・Z世代の若者のキャリア観や子育て世帯の働き方に焦点を当てながら、どのようなところに世代間のギャップがあり、人材不足を解消するために取り組んでいくべきことは何かをお話いただきました。
第2部では、亀岡市内で働きやすい職場づくりに取り組む京都中央信用金庫、南丹清掃株式会社、大西建設株式会社からミレニアル世代のみなさんを交えて事例紹介やクロストークを行い、第3部では、先ほどご紹介した研修ツールを使ったミニワークショップを開催しました。
セミナーに参加した企業のみなさんからは、「女性として共感する課題がたくさん挙げられたので、次回は上役にも聞いてほしい」「今日見つけた課題に対して、限られたリソースのなかでどのように改善できるのかを考えていきたい」という声が寄せられました。
おわりに
今回のリサーチを進めるなかで印象的だったのは、制度があるだけでは不十分だということ。活用されてはじめて制度が機能するとすれば、活用されていない原因がどこにあるのかをまずは見つけていくところからはじめる必要があると感じました。
また、「今回は女性にフォーカスされていると思うので、次回は男性にも話を聞いてもらえたら」という女性社員の方や、「亀岡市内にも増えている外国人技能実習生からも話を聞く機会をつくりたい」という行政職員の声もあり、ツールキットを活用しながら、課題解決に向けてともに語り合える官民コミュニティが形成されていくことも大切だと思いました。
世代やジェンダー、国籍だけでなく、働く目的やライフスタイルも多様化する現代において、“誰もが働きやすい”職場づくりを叶えることは決して簡単なことではありません。移住・定住促進を進めるなかで、どのように外から人を呼び込み人口を維持するかという議論がある一方で、若者のキャリア選択において求められるものが変化し、10〜20代の人口流出に対応できていない現状もあります。
こうした課題に対して、実際に現場から耳にした声をどのように改善へつなげていけるのか、小さな一歩から踏み出してもらえる機会や環境づくりを今後もサポートしていけたらと思います。最後になりましたが、インタビューにご協力いただいたみなさん、パートナーとして参画していただいたみなさん、ありがとうございました。
●一般社団法人公共とデザイン
https://publicanddesign.studio/
●中家 寿之さん
https://toshiyukinakaie.com/index.html
●戎 多麻枝さん
https://ebisutamae.jimdofree.com/