「なにを食べて、なにに触れて、生きていく?」
どんなすてきなお祭りも、イベントも、毎日の暮らしはすべて、大半の時間を占める日常生活によってつくられます。だからこそ、毎日の暮らしでなにに触れて、どんな人たちと、生きていくのか。そんな素朴で当たり前とも思える、問いの大切さを、改めて体感させられました。
今回は、2019年1月27日(日)に大阪・心斎橋で開催された、富山と大阪をつなぐ交流会、「富山の食と人の交流会@大阪 -meets富山-」について、レポートしていきます。
心理的なキョリを縮めたい
今回フィーチャーするのは北陸・富山県。3,000m級の山々が連なる立山連峰から水深1,000mを超える富山湾に至るまで、高低差4,000mのダイナミックで多彩な自然と、そんな自然によって育まれる食と文化が魅力的な地域です。
まずは富山県の移住交流担当、高木さんからのプレゼン。
実は地理的に見れば、富山県と東京、富山県と関西のそれぞれの距離はだいたい同じくらい。そのためか、富山県はちょうど関東と関西の文化圏の境目にもなっているんだとか。
そんな富山県ですが、近年のホットニュースは新幹線の開業。2015年の北陸新幹線が金沢まで走り、対東京へのアクセスが便利になりました。
しかし、関西から見ると状況は異なります。それまで富山まで直通していた特急がすべて、途中、石川県金沢止まりに。所要時間こそ変わらないものの、新幹線への乗り換えというハードルで心理的な距離が離れてしまっています。
そんな富山と関西の心理的な距離を少しでも縮めたいと、今回富山県が主催して、行われたのがこの交流会です。
生業を持ちながら芸を磨く、暮らしの美しさに惹かれて
ここからはゲストトーク。富山市で創業されたお二人の方がゲストとしていらっしゃいました。
まずおひとり目は、原井 紗友里さん。
【プロフィール】
原井 紗友里さん(富山市)
観光コンサルティング会社「株式会社オズリンクス」代表取締役
富山県富山市生まれ。東京の大学を卒業後、中国・チンタオの日本人学校教師を経て、富山にUターン就職。「とやま観光未来創造塾」グローバルコース修了後、2016年に株式会社オズリンクスを設立し、「越中八尾ベースOYATSU」をオープン。文化の薫る八尾の暮らしを体験できる観光拠点として、県内外からはもちろん、海外からも多くの方が訪れる。着物のアップサイクルブランドtadasも立ち上げ、八尾の光をつくり出している。
一度大学と就職で県外へ出るも、8年後に富山での創業を目指しUターン。「とやま観光未来創造塾」グローバルコースで半年間、実践的なノウハウを習得し、2016年に会社を設立されます。
そんな彼女のフィールドは、縁もゆかりもない山間部の八尾町。毎年9月には年中行事「おわら風の盆」が。町で生まれ育った未婚の26歳までの若者が踊ります。全国から20万人近くの見物客が訪れる一大行事です。
そんな3日間の伝統行事をささえるのが八尾町の日常の暮らし。ナリワイを持ちながら、芸を磨く暮らしの美しさ、文化性に惚れたと原井さんはいいます。
原井さんが手がけるのは観光・アパレル・コンサルティングの三事業。Uターン後まず手がけたのは、観光。八尾町への交流人口を増やしたいという思いで、2016年にとして「越中八尾ベースOYATSU」をオープン。一棟貸しの宿泊滞在拠点と、イベントスペースとして運営しています。
「八尾町の客室」というコンセプトで、よるごはんの提供をせず、町全体をホテルに見立てて滞在してほしいという仕掛けづくり。そのほか、ライブイベントや着物の着付け体験、おわら風の盆で使われる三味線体験なども行っています。
その後、2018年に着物のアップサイクルブランド「tadas」を立ち上げました。一点一点古着の着物をほどいて、すべて一点物の商品をつくっていきます。街の女性たちの雇用を生みたいといいます。
人口減少時代にあって、さまざまな事業を行うなかで、すこしでも定住人口を増やしたいと原井さんはいいます。それはおわら風の盆の担い手を育てるため。ご自身も孫がおわらで踊ってほしいというほど、八尾町の暮らしに魅了された原井さん。今後は教育事業にも着手したいと、挑戦はまだまだ続きます。
感受性の高い人とつながり、刺激し合うことで新たな可能性が生まれる
お二人目は、映画が観れるカフェの経営と、イベント企画を手がける、田辺和寛さん。
【プロフィール】
田辺和寛さん
株式会社EverT CEO / DJ / Producer
富山県射水市生まれ。上京し、DJ活動を続けていたが、本来の自分の在り方を考えるようになり、2011年に生まれ故郷である富山へと拠点を戻す。地元のイベント企画会社に勤務後、2014年に独立。富山市中心部で「街と文化と実験」をテーマにした自由空間と「映画が観れるカフェ」を組み合わせた「HOTORI×ほとり座」を経営中。富山県としてのポテンシャルと魅力を最大限に発揮するべく日々奮闘中。
23歳で音楽活動を志し、東京へ。音楽を仕事にするために必死に食らいついたという田辺さん。しかし30歳のときに運命的なお店と出会います。
三軒茶屋にある「orbit」はお店でありながら、家のような独特の空間で、交わされるカルチャーの息づくコミュニティ。それまで音楽のために、普段の生活を疎かに。日常生活におけるサブカルチャーの重要性に気づいた田辺さん。自分でもなにか表現し、発信したいと思い、10年の東京生活からUターンで富山へもどります。
その後、地元のイベント企画会社に就職し2年半、サラリーマンという形で、富山をもう一度勉強し直した、といいます。2014年に独立。「なんでもやる」というスタンスにさまざまなオーダーが舞い込んで、さまざまなイベントや企画を手がけるように。
2017年に「HOTORI×ほとり座」をオープン。店のような家、家のような店をキーワードに映画の見れるカフェをオープン。サブカルチャーと日常生活のキョリを縮めたいと、「ちょっと時間があるから映画を見に行こう」というコンセプトでお店を営んでいます。
感受性の高い人たちとつながり、刺激し合うことで新たな可能性が生まれてくると田辺さんはいいます。そんな熱い思いが刺激されあうなかで、さまざまなイベントや企画が生まれていきます。次の世代にどんなバトンを手渡せるか、田辺さんの挑戦は続きます。
その土地が育んだ食をいただけるありがたさ
そして、イベントをおいしく、華やかに盛り上げてくれた料理を手がけたのは、吉田千佳さん。
【プロフィール】
吉田 千佳 さん(料理研究家)
「食べることを通して、人を元気にしたい」をコンセプトに料理教室など活動
原点は、転勤先の富山で暮らしていた10年前。息子のためにつくった「米ぬかふりかけ~糠ノ助~」の作り方教室を開いたこと。富山の有機野菜カフェや京都の野菜屋のまかない番などを経て、お米と野菜が真ん中のシンプルな食卓を提案し、食の大切さを全国のオトナたち、子どもたちに伝えるライフワーク。
ご自身も富山に10年ほど暮らしていた、という吉田さん。いまでも味噌作りは富山に戻って行うんだとか。この日の食材はどれも、吉田さんが富山県各地から取り寄せた厳選の素材です。
トークのあいだ、料理をその場で用意してくれました。
「豪雪地帯である富山は山に降った雪が、春に雪解け水となって土地を潤し、おいしい水と豊かな野菜を育てる。水がうまいから米やお酒もおいしい。さらにミネラルを豊富に含んだ水が海に流れ込み、海産物を育てている。そうした自然が富山のおいしい食文化を生み出している」と吉田さんはいいます。
富山の人は当たり前のように食べているから気づかないけど、よそ者からするとすごいこと。そんな恵まれた土地での暮らしを、よそ者として経験したからこそ、つくれる料理。毎日口にするからこそ、水や食材のおいしさは暮らしを考えるうえで大切なんだと、おいしさで体感させられました。
よい素材とそれを活かす文化のある土地・富山
熱意あふれるトークと、富山のおいしい食が、和気あいあいとしたの交流の場をつくった印象で、イベントは終始、和やかながら活気ある雰囲気でした。
ギュッとうまみの詰まった富山と、その素材のよさを引き出すキーマンたち。そのどちらもがあって成り立つ文化。そんな富山の魅力に改めて気付かされるイベントでした。
次回は、3月に京都でも開催します。富山ゆかりの方も、富山がなんとなく気になっている方もお気軽にお越しください!
イベント概要
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▼日時:3月2日(土)17時00分〜19時00分頃を予定
(受付開始)16時30分頃から
※遅れての参加、途中退場も可能ですので事前にご連絡下さい。
▼会場:GROVING BASE(シェアオフィス&カフェ・イベントスペース)https://groving-base.jp
京都市下京区新町通松原下ル富永町107番地1
《アクセス》
地下鉄五条駅徒歩5分/地下鉄四条駅徒歩9分/阪急烏丸駅徒歩9分
※駐輪場もあります。
▼申込はこちらのフォームからお願いします。
https://docs.google.com/forms/d/11xkJqzThVkWKrJx2Dg9XcKa311MNf41pgq5SIRU7HAA/edit