今の暮らしを急には変えられないけど、いつかは地方で暮らしてみたい。地元に戻りたいけど、どんな仕事があるのかがわからない…「地方で暮らす」ことに興味はあっても、そんな悩みがあってなかなか一歩を踏み出せない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
2019年2月8日、京都「TRAFFFIC」にて開催されたイベント「都市に住みながら地方に関わる 新しい働き方(ローカルベンチャー石川・七尾市)」では、石川県七尾市からゲストを招き、都市部で暮らしながらできる地方への関わり方をお聞きしました。
様々なアプローチで七尾に関わる人を増やし続ける
「この会場に石川県出身の方はどのくらいいますか?」そう参加者に尋ねたのは、今回のナビゲーター・岡本 竜太さん。
岡本さんの呼びかけに集まった30人以上の参加者の中から10数名の方々が手を挙げました。他の方々は地域の魅力だけでなく、都市部に住みながら地方と関わることのできる七尾市独自の取組みにも興味深々のようです。
岡本さんは民間のまちづくり会社にて、地域の中小企業の採用支援・人材育成研修・移住支援・ツーリズムなどを行っています。
事業の後継者の募集を含め、七尾市の企業の求人を掲載している「能登の人事部」では、地域に根付いた仕事だけではなく、副業として月に1回、能登を紹介する記事を作成するライターの仕事など、都市部で暮らしながら七尾市と関わることのできる仕事の募集を行っています。
また、「能登留学」という長期のインターンシッププログラムのサポートも行っており、都市部の大学生が長期休みや休学制度を活用して、七尾市で活動する機会を生み出し続けています。
新しいニュースを発信し続け、七尾の面白さを地元の若者と共に構築していく
続いて参加者の興味を引き付けたのはゲスト友田 景さんのお話です。友田さんは大阪府柏原市と石川県七尾市の二拠点居住者。
七尾市では「七尾街づくりセンター株式会社 ローカルベンチャー戦略アテンダント」として、大阪では「株式会社ビズデザイン大阪 代表取締役」をはじめとする多方面で活躍されています。
「複業・兼業は大企業だけでなく、地域こそ取り組むべきではないかと感じている」という友田さん。
そこで七尾で、「ポートフォリオワーカー」をはやらせようと考えているそう。ポートフォリオワーカーとはどのようなことなのでしょうか?
「例えば、農業を始めるときに、いきなり農業に全てかけるのではなく、今までの仕事のスキルも生かして、別の仕事もしながら、農業を始めてみる。ポートフォリオワーカーとは、そんな風に“自分の好きなように組み合わせる”という働き方です。それが七尾では実現可能なんですよ」
今、七尾を含め地方の課題は「働き手が少ないこと」。七尾では若い人は地元に残らず、都会へ出てしまう傾向が強いようです。
その理由は「要するにおもんないからやろ?」と友田さんは言います。都会のほうがやりたい仕事がある、おもしろい生活があると若い人が感じている以上、若い人たちの目が都会へ向くのは当然のこと。
「おもんないって、なんでや?やっぱ新しいことがないでや」と友田さんは続けます。
七尾から新しいニュースを作るために友田さんたちは、新しい取り組みを徹底的に応援し、もっと効果的にたくさんの人へ届くようにPR活動を行っています。
「マニアックナイト」と称したマニアが好きなことを好きなだけ語るイベントは、「七尾でも自分の好きなことを語れる場所が欲しい!」という地元の方の声から生まれたそうで、好評につき、すでに16回も開催されています。
偏愛を語れるイベント、ラインナップを見るだけでわくわくしますね!
他にも地域の魅力を発信するローカルメディア「能登半島・七尾移住計画」の運営や、後継者不足に悩む企業の支援を行っています。
また昨年の10月には、「大人の会社見学」を開催。後継者を募集している民宿や、カキ養殖の経営者となった移住者の方に、事業承継について詳しくお聞きするツアーを実施しています。
七尾市でどんな仕事ができるのか、興味がある方はぜひ、お問い合わせくださいね。
旅館を通じて、地域の魅力を発信していく
続いて「観光×後継者・農業×事業承継・地域おこし×移住」に携わるゲストから、それぞれの仕事について、またその仕事を通じて感じる七尾市の魅力をお聞きしていきます。
和倉の夕日に染まる宿として、多くのお客様を虜にしている和倉温泉・多田屋。明治18年創業、今年で134年目を迎えます。
その6代目の多田 健太郎 さんは高校まで地元石川で過ごしますが、大学進学のため東京へ。その後、アメリカ留学、日本のIT企業勤務を経て、家業の多田屋を継ぎ、代表取締役となります。
今までのように「景色、料理、温泉」というコンセプトは元より、旅館ごとの「個性」を打ち出さなければ、お客様は選んでくれないと考えた多田さん。
そこで、団体旅行客用に設えていた場所を、個人個人が景色を楽しみながら食事ができる場所へ変更するなど、時代に沿った様式に変更するなどの工夫を行っています。
「今後は、旅館の温泉・料理・部屋・売店・エステなど旅館の持つ様々なコンテンツと地域の魅力を掛け合わせて、地域をPRしていきたいと思っています。旅館を通じて地域の魅力を発信していくことは、旅館業が担うべき役割だと考えています」
それらを実現するためには、どんな人が多田屋に加わてほしいかをお聞きしました。
「僕は他の地方で暮らしてから能登へ戻ってきて、改めていい所だなって思えました。地元の人は「なんもない」と嘆く景色の中に能登のいいところがたくさん詰まっているんです」
「僕のようにUターンでここに戻ってきたり、他の地方を見て来た方が持つ「ここいいね!」という目線で、能登の良さを一緒に見つけながら、ビジネスを一緒に組み立てられる人と仕事がしてみたいですね」
まちの財産である「農業」を守り、次の世代へバトンをつなぐ
七尾市の北側に位置する中島町では「農事組合法人なたうち」 が、トータルで農地の管理・運用を行っています。その代表を務めるのが村田正明さん。
現在は72ヘクタール、数年後には100ヘクタールを超える農地を管理し、順々に整備・生産を進めています。集落営農活動以外にも、田植え体験や味噌づくり体験を開催し、もっとたくさんの方に農業へ関心を持ってもらえるよう活動しています。
また、組合スタッフの14名中の4名は県外からの移住者。古くから関わり合いのある人だけでコミュニティを形成するのではなく、移住者目線のアイデアも生かしながら、特産品開発及び販売などを積極的に進めています。
農地組合法人のトップとして地域を牽引してきた村田さんも70歳を超え、そろそろバトンタッチしてくれる人が現れてほしいと言います。
「これからはただ農作物を作るだけではだめです。作ったものをどう売るのか?どんな加工品を作ればいいのかなどをプランニングし、マネージメントできる人が来てくれればと思っています。また、消費者からの質問に答えられることが大切なので、農業の経験もある方だと嬉しいですね」
祖母の家へ孫ターン!“古き良き”を感じる暮らし
七尾市中島町の地域おこし協力隊として活動する本谷 智子さんは、二年前祖母の家がある七尾市に移住しました。以前は大阪の百貨店でバイヤーとしていた本谷さんはモノづくりを通じて、日本古来の良さに気がついたといいます。
「お米を作り、梅干しをつける。日本古来の風習が体験できる中島町は、日本のいいところが残っている場所だと感じました。そこで大阪ではなく、七尾に戻ってものづくりに関わろうと決めました」
町では農業と関りがある祭りが多く、そこに参加することが楽しいと話す本谷さん。祭りを通じて、地域の人たちと濃い関りを築いていることもあり、移住して大変だと思うことはあまりないそう。
また穏やかな七尾湾が近くにあり、休日はヨットを楽しむこともあるそう。なんと、イルカに遭遇することも!山も海も近い、ここだから楽しめるアクティビティも七尾市の魅力の一つです。
様々な働き方に出会い、新たな道しるべを見つけた夜
ここからはゲストとの交流タイム。ゲストの話を聞きながら感想や疑問などを付箋に書いていただき、その付箋を直接、ゲストに渡していただくことにしました。
直接話をすることで、もっと知りたいと思ったことや湧いてきた疑問を深める時間となりました。
会場の至る所でゲストと参加者の談笑している声が聞こえてきました。どのように、今の職業に就いたのか、どんな仕事をしているのか、どんな人たちと共に働いているのか…。
普段知ることのできない現場の声を直接聞ける貴重な機会だけあって、参加者の方も真剣に耳を傾けていました。
あっという間に交流会の時間も終了、最後に岡本さんからこんな言葉をいただきました。
「求人には掲載していなくても、その人に合わせた仕事や、地域の関わり方を作ることもできます。その人のライフスタイルや想いに合わせた地域の関わり方を、一緒に探すお手伝いもできます。ぜひご相談ください!」
兼業や複業、後継者、多拠点居住など多様な働き方が広がる今、七尾市での取り組みは多くの方に新しい道しるべを示してくれました。
今の働き方を見直し、これから何をしていこうかと迷っている人は、そのヒントを見つけに石川県・七尾市を訪れてみてはいかがでしょうか。