噛めば噛むほど好きになる?!無限大の富山の魅力を味わう「富山の食と人の交流会@京都 」

地域に関わる、一番身近な接点ともいえる「食」。「大好きなものが特産品だから」「おいしそうなものが多そうな場所だから」そんな気軽な気持ちで、まずは地域に関わってみるのもいいかもしれません。

2019年3月2日、京都「GROVING BASE」にて開催した富山の食と人の交流会@京都 」は、富山で活躍するゲストから、暮らし・仕事・なりわいづくりなどをお聞きするだけでなく、富山の食を味わいながらゲストや参加者同士で交流する楽しいイベントとなりました。

富山は無限大の可能性を秘めた県

まずは、富山県総合政策局企画調整室の髙木拓実さから、県の特色についてご紹介いただきました。髙木さんは富山のことを、「地味だけど、旨味の詰まった昆布のようだ」と言います。富山県は昆布の消費額が日本一。なんと、昆布を使用したパンやスイーツまであるそう!

またダイナミックな自然や、歴史的な街並み、海・山それぞれの幸が存分に味わえる食文化など、コンパクトな県の中にしっかりと「旨味」が詰まっていると言います。

「おしゃぶり昆布のように、噛めば噛むほど味が出てくる。つまり、何度も訪れ、関わりを深めていくごとにもっと富山が好きになってもらえるはずです!」と髙木さん。

富山はいろんな旨みが詰まって組み合わせもしやすい、無限大の可能性を秘めた県。そんな富山の魅力を知るゲストの皆さんに、お話を伺っていきます。

 

余白を活かすことこそが、なりわいづくりの鍵となる

「ホタルイカの産地・滑川市からやってきた桶川と申します」と、ホタルイカ愛が溢れる自己紹介をしてくれたのは桶川高明さん。ホタルイカ漁が解禁になったイベント前日、さっそく漁港を訪れていたそう。漁港からほど近くに自宅があり、海の恩恵を感じながら暮らしている桶川さん。富山でのなりわいづくりを中心に話していただきました。

2013年に二人目のお子さんが生まれるタイミングで、京都から故郷の滑川市へUターンした桶川さん。もともと設計事務所を自ら営んでいたこともあり、移住するハードルはそこまで高くないと思っていたそうです。

しかし、いざ富山で仕事をはじめようとしたところ、思わぬ誤算が生じました。

「富山では“デザイン”にお金を払うということが、あまり認知されていませんでした。例えば、家をつくるにしても、ハウスメーカーさんの工事費の中にデザイン料が含まれている。地域の人からすれば、僕らのような「描く人」のフィーをなぜ払わなきゃいけないの?という認識だったんです」

桶川さんは、その誤算をどうやってうめていくべきか、ということを考えなければなりませんでした。その時、しばらく離れている間にさびれてしまった地元のお祭りが目に留まりました。

「設計事務所としてどう生きるかということ、町に対して何かやらなきゃいけないということ、二つの考えが頭の中にうかんでいました。じゃあ自分のできることを活かして、地域のために何かやっていこうと考えがまとまりました」

 

現在は、コワーキングスペースの機能を持ったオフィスの改修などの空間のデザインだけではなく、南砺市の地域プランニングディレクターや、コワーキングスペース「TRIO」の運営など多岐にわたる活動を行っています。

さらに、大好きなホタルイカのツアー企画やガイド、商品のパッケージデザインなどを手がけることも。

設計事務所として空間をデザインするだけでなく、「富山のなりわいを最適化していきたい」と事業を作る段階からサポートをすることが多いそうです。

滑川市を軸にしながら、どんどんなりわいの幅を広げ、地域内での活性化を目指す桶川さん。はじめは難しく感じることもあったそうですが、「富山にはまだまだ余白が多く、働きやすさもある」と言います。

「富山には、まだまだ手つかずになっている分野も多くあります。自分から何かしかけたい人はチャレンジしやすい場所かもしれません。ただ、地域には自ら関わっていかないとだめですよ!要はギブ&テイク。みんなで一緒にやっていきましょう!」

 

富山の自然に寄り添う米づくりで「生きる実感」を味わう

続いては、魚津市で米づくりをしている「ひえばた園」の稗苗良太さんからお話をお伺いします。

稗苗さんが営む「ひえばた園」は、肥料や農薬を使わず、稲を収穫時に刈り取ったあと、脱穀までの間乾燥する「はさぼし」とよばれる農法でお米を作っています。今回は農家を目指した理由や、米作りを通して生まれた地域の人たちとの交流についてお聞きしました。

大学生の時、農村を研究している先生に誘われ、ラオスを訪れた稗苗さん。この時ラオスで見た光景は、のちに稗苗さんを農家へと導くきっかけになったようです。

「僕はラオスの農村の暮らしを見て、懐かしい気持ちになりました。そこには自分が幼い頃、ばーちゃんと過ごした日々が広がっていたからです。畑に行くとみんなで声をかけあって、助け合って。畑で採れたものを物々交換する。そんな日常に心が揺さぶられたんです」

その後、農家になろうと決意させた出来事が起こります。いつもは実家から送ってもらった、叔父が自然農法で作るお米を食べていた稗苗さん。たまたまお米を切らしてしまい、間に合わせで買った近所のスーパーのお米の味に衝撃をうけました。

「一番安くて小さいサイズの米を、いつものように炊飯器に入れて炊いたんですよ。そしたら、とんでもなくまずい米が炊飯器から出てきたんです!普段何気なく食べている叔父の作るお米が、とてもおいしいということ。そして米を作ることとは、なんて素晴らしい仕事なんだと思いました」

次第に「農家は魅力的な仕事だ」という想いが膨らんでいき、ついには就活をやめ、「農家になろう」と決意。大学卒業後、地元富山へUターンしました。

農家になると決めたことに、周囲の反対も大きかったという稗苗さん。しかし、自分の人生を自分で選択し、農家になる道を選んだことで「生きる実感」を得ることができたといいます。

さらに「心で食べるお米を作りたい」と行う活動を通じて、たくさんの人たちとの交流が生まれるようになりました。

老若男女、国籍も様々な人たちと共に田植えをする「田植え選手権」や、しめ飾りを作るワークショップで「農の暮らし」を実際に体感してもらったり、東京のマルシェに出店しお客様と直接交流する機会を設けたり。稗苗さんが幼いころに味わった「ばぁちゃんとの暮らし」を、ほんの少しでも味わってほしいと精力的に活動を続けています。

「僕の田んぼから10キロぐらいの上流の景色を眺めて、いつも『これは世界遺産級だな』と思うんです。こんな豊かな土地で、お米作りができていることを僕は誇りに思っています。僕の時は言ってもらえなかったけど、僕は「農家はいいよ!」って自信もって、次の世代に伝えていきたいです!」

 

「おいしい」をきっかけに富山へ!

そしてここからは、待ちに待った「富山の食」を楽しむ時間です。今回の料理を手がけてくれたのは、料理と暮らし Bran※(ブラン)」を主宰する吉田千佳さん。富山には11年ほど住んでいたことがあり、京都でも富山の食を伝える活動をされています。

美味しい料理を手掛けてくれた皆さん。左から二番目が吉田さん

「富山は水がおいしいところ。水がおいしいということは、料理は何をしても美味しいんですよね。今回はホタルイカの黒づくりをカナッペにしたものや、白えびを玉ねぎのかき揚げなど、富山のお酒に合うメニューを作りました。皆さんで召し上がってください!」

今回はゲスト稗苗さんが作る「ひえばた園」のお米で作ったおむすびも。ずらりと並んだ「富山の食」を食べながら、ゲスト・参加者と交流していただきました。

吉田さん考案の米ぬかふりかけをまぶしたおむすび
全国にもファンが多い富山の日本酒
おいしい富山の食に皆さん、夢中!

富山の食を味わいながらの交流会は、大盛り上がり。おいしい富山のお酒もすすんで、笑顔が各所であふれる楽しい交流会となりました。

おいしい食をきっかけに、たくさんの人が「富山へ足を運んでみたい!」と興味を寄せてくれたようでした。また、稗苗さんのもとには数名の方から「農業をやってみたい!」という申し出があったそう。

豊かな自然、豊かな食、魅力が無限大の富山県。あなたも是非、一度富山に訪れてみませんか。

きっと、訪れるたびにどんどん富山が好きになるはずです。

文・三上由香利