季節ごとに働ける?!あなたも、北海道・仁木町にシゴトをひとつ持とう!|北海道もったいナイトイベントレポート【12/1】

“若者たちが地元で働くこと、生きることをもっと身近に”

地域で活躍するゲストを他府県から京都にお呼びし、これからの「仕事」や「暮らし」を参加者みんなで考えるローカルナイト。ここ最近、これまで「地方」と言われてきた全国各地に若い世代が移住し、新たな取り組みや仕事づくりを始めることも珍しくはありません。

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現在日本では、5割を超える学生が地元就職を希望しているそう。(※1) その一方で、距離や金銭面で就職活動がしづらいことや、地元企業との出会いや地元とのつながりが少ないこと、地域の最近の動向を知らないことなどが課題となり、なかなか地元就職につながりにくいという現状もあります。

(※1)マイナビが2017年5月に発表した「2018年卒マイナビ大学生Uターン・地元就職に関する調査」によると、地元就職希望率は51.8%。

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ローカルナイトは、そんな学生や若者たちが新たな選択肢へ踏み出せるきっかけを、学生の街・京都でつくっていけないかという取り組み。同郷の人たちが気軽に集える若手県人会のようなコミュニティにもなっています。(※ローカルナイトはMeets localの取り組みのひとつです。)

本日は、12月1日に開催したローカルナイト「北海道」編の様子をお届けしていきたいと思います。(イベントページはコチラ ※Facebookページに移動します。)

今回は、 「北海道にシゴトをひとつ持とう!」をテーマに、まちづくりの仕事や地域おこし協力隊、ライターなどの職業に就く3名のゲストそれぞれの視点から、今現在の北海道との関わりやそこに至った背景などをお話いただきました。

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まずはじめに、アイスブレイクとして北海道の形と地名をそれぞれ紙に描いていきます。なかなか苦戦している出身者もいれば、地理が好きでスラスラと描いていく学生さんも。

その後、それぞれが描いた北海道を見比べながらいくつかのグループに分かれて自己紹介をし、お待ちかねのゲストトークがはじまります。

最初のスピーカーは、「一般社団法人 ホームタウン総合デザインセンター(通称:ホムデ)」の宮嶋瞬(みやじま しゅん)さん。現在は、地元・北海道で自治体と一緒に様々な企画を考えたり、「北海道ワカモノ会議」を立ち上げたりと道内を動き回りながら、後志エリア(しりべしエリア:小樽・ニセコ・余市・仁木)を中心に仕事をしています。冒頭に「僕は地元愛が偏っているので、ちょっと真面目に話してしまうかもしれませんが・・どうぞよろしくお願いします(笑)」と宮嶋さん。

 

Uターンを経て模索する「北海道」ならではの働き方。日々感じる “もったいない” から生まれていくシゴトの可能性。

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北海道新幹線の道内最初の駅がある、木古内(きこない)町出身の宮嶋さん。

大学進学とともに東京へ行き、卒業後は雑誌の編集や不動産投資の営業、新潟で200円カレーFCの立ち上げなどを経て、北海道へUターン。市町村単位で受け入れを行なっている「地域おこし協力隊」の北海道庁版の募集があったタイミングだったそう。

今回のイベント名を「もったいナイト」にしたのは、宮嶋さんが「北海道はもったいないのでは?」と思ったことがきっかけで移住を決心したという背景から。

まずは、そんな宮嶋さんから北海道の概要と大まかな歴史についてお話いただきました。

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現在、北海道の総人口は約550万人。そのうち200万人あまりが札幌で暮らしています。自治体は全部でなんと179もあるのだとか。

総面積は、四国と九州を足したよりもさらに大きい83,450㎢。稚内から函館までは約630kmほど離れており、これは東京〜岡山間に相当します。

その広さゆえ、北海道民が道内を旅行で訪れるケースも多く、旅行のスタイルは札幌から1時間半圏内の小樽や旭川が定番なのだそう。日帰り観光が多い一方で、訪日観光客も数多く訪れる北海道。滞在時間は訪日観光客のほうが長く、それに比例して消費額も多いので「各自治体でもインバウンド対策に力を入れたらいいのにな・・もったいない。」と感じている宮嶋さん。

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みなさんもご存知の通り、野菜や穀物の一大生産地である北海道。それに加えて、周辺が海に囲まれているため海産物も豊富に獲れます。ほっけはなんと99%が北海道産! 昆布や鮭も86%が水揚げされています。

こんな風に北海道が日本国民の胃袋を支えるまでに至った背景には、「北海道の開拓と開発」の歴史があるのだそう。

「余談ですが、北海道と関西は 江戸時代から『北前船』を通して交流があったんですよね! だから僕たちも今日はこうして、北海道から関西に来ています(笑)。後からバトンを渡す地域おこし協力隊の前田くんもそうなのですが、北海道で出会う方に意外と関西出身者が多いのもそんなご縁かもしれません。」(宮嶋さん)

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明治維新の頃にはじまった北海道の開拓。

寒さゆえに一度断念された後、明治4年に「屯田兵」によって再び開拓がはじまります。その際にアメリカ型の大区画で農作物を育てる農業のスタイルが確立されていきました。すると「生産地」を求めて北陸や東北地方から、さらには徳島から藍染職人などが移住してくるように。

以後、北海道型の大規模漁業や石炭などのエネルギー資源の開発、木材の輸出など、産業が発展していくとともに鉄道や海運が発展していきます。戦後は、全国で増加する人口を支えるための国家プロジェクトとして さらなる開発が進んでいったそう。

その後、石炭から石油にシフトした「エネルギー革命」によって自治体が経営破綻したり、「札幌オリンピック」による建設ラッシュで毎年4万人ずつ札幌の人口が増えたりと混沌とした開発が繰り返されると、今度はリゾート開発の時代へと突入していきます。

現在の、人口およそ5,000人ほどのニセコ町や16,000人ほどの倶知安町からなるニセコエリアでは、数々の外資系企業が進出しており、一部地域では日本語が通じないところもあるのだとか。坪単価は約500万円で北海道一高く、東京都港区と同じくらいの相場なのだそう。

このような歴史や現状があり、課題と可能性が交差する北海道のなかでも、さらに潜在的な可能性を秘めている「仁木町」。

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札幌から約58kmほど離れた町で、人口はおよそ3,300人。そのうち、大小合わせて300ほどの農園があります。

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仁木町では、年中を通してさくらんぼやプルーン、ぶどう、りんごなどのフルーツを栽培しており、品目によっては道内でもトップシェアを占めています。なかには、売り上げ規模が1兆円を超えている農園や、ハウス4本で野菜や果樹を栽培しながら生計を立てている農家さんもいるのだそう。

なんと、朝にサーフィンをしてから収穫をはじめる という羨ましくなるようなライフスタイルの農家さんも・・! 会場からは思わず、感嘆の声が聞こえてきます。

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嶋田茂農園「匠」でつくっている愛してアイコを使用したトマトジュース(1本1000円)

また、仁木町は「愛してアイコ」というブランドミニトマトの一大生産地。数あるミニトマトの中でも特に甘く、長細いプラム型のフルーツトマトで、一般的なトマトに比べて約2倍ものリコピンを含んでおり、ビタミンやミネラルも豊富なのだそう。

仁木町では現在、0.1haから農業が可能 だそうですよ! (※0.1ha=ハウス1本分程度に相当)

「北海道には、これまで紹介してきたような豊富な地域資源があるにもかかわらず、どこかもったいない気がするんです。」と宮嶋さんのお話は続きます。

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例えば、隣の町と比べて自分の町を謙遜しがちな住民の方々。

宮嶋さん自身が道外に出て感じた地元の良さを、地域のみんなも気づくことはできないか。そのためには一体何が必要なのだろう・・と考える日々。

「このような、日々感じている『もったいない』ことや、地域に足りていない部分を、多様なメンバーとひとつのチームになって補っていきたい。そういったところにきっと、『シゴト』が生まれる可能性があるんだと思います。仁木町は役場も一緒にチャレンジができる町! 僕は、北海道の扉は仁木町から開いてきたのではないかと思っています。」(宮嶋さん)

そんな「もったいない」ことを できるところから解消していこう! と、他にも余市町に移住相談窓口の機能も合わせもつ「COFFEE STAND by shizuku」をオープンしたり、積丹(しゃこたん)半島で古民家のDIY合宿を企画したり、「北海道ワカモノ会議」を立ち上げたりと精力的に動いている宮嶋さん。いきなり「暮らす」というかたちではなく、まずは様々な角度から北海道や仁木町を訪れるきっかけをつくっています。

北海道や仁木町に興味がある方はぜひ一度、宮嶋さんの元を訪れてみてはいかがでしょうか。

続いてのスピーカーは、「greenz.jp」などで記事を書いているフリーランスのライター、北川由依(きたがわ ゆい)さん。大学進学とともに北海道を訪れ、社会人生活も含めて10年間 札幌で暮らしていました。2015年に家族と一緒に京都に移住。現在は子育てをしながら取材・執筆などを行なっています。

 

大学進学とともに訪れた北海道で暮らした10年間。地域を離れた今でも関わり続けることができる「ライター」という仕事。

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新卒で中小企業の支援や農産物のブランディング、商店街の活性化などを行う小さなまちづくり会社に入社した北川さん。

就職活動の際には、地元・三重に戻る選択肢も考えたそうですが、自分が思い描くキャリアを実現するためにも、大好きな人たちがいる北海道で働くことを決意。もともと学生時にインターンで関わっていたことがきっかけだったのだとか。

当時は、札幌に住む若者向けの農業体験を企画・コーディネートしたり、様々な起業家の方々にお話を聞きに行ったりと北海道内を駆け回るような毎日。刺激的な一方でとにかく忙しく、子育てをしながら仕事を続けていくイメージが湧かなかったそう

greenz.jp/yui kitagawa

それでも、これまで北海道で出会ってきたような 自分のまちに誇りを持って働く起業家や、我が子のように愛情を込めて作物を育てる生産者の方々の「想い」を届けることはできるかもしれない! と未経験からライターをはじめて4年が経ち、現在に至ります。

北海道にも取材で足を運び、記事を執筆。北川さんのように「ライター」という仕事を通して、これまで縁があった地域とつながるという選択肢があることも、今回のイベントのテーマである「北海道にシゴトをひとつ持つ」ためのヒントになるかもしれません。

また、北川さんが記事を書いている「greenz.jp」には、様々なまちづくりやソーシャルビジネスの事例が掲載されているので、興味がある方はぜひリンク先を訪れてみてくださいね。

最後のスピーカーは、仁木町で2017年5月から地域おこし協力隊として働いている前田将克(まえだ まさかつ)さん。現在は協力隊として、オーガニックワインやブランドミニトマトを使用したご当地バーガーの開発や空き家の利活用などを行っています。

 

日本一周を走る道中、北海道で出会った素敵な風景とやさしい人々に魅了されて移住を決意。現在は地域おこし協力隊として、仁木町で働いています。

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前述の通り、兵庫県出身の前田さん。北海道との出会いは日本一周を走っていた時のこと。

(※詳しく知りたい方はこちらの記事へ: http://hashireruya.com/maeda-interview)

走るのがとにかく好きで、小さい頃から陸上競技に打ち込んでいた前田さん。高校時に怪我をして以来、思うように走れなくなってしまったそうですが、卒業時に何気なく地元を走った時の桜並木がとてもきれいで、“景色を楽しむ” という走り方があることに気づきます。

その時、前田さんのなかに「もっといろんな人や景色に出会いたい!」という気持ちがふつふつと湧き上がり、高ぶる気持ちを抑えられずに19歳で走りながら日本一周することを決意。

兵庫県を出発し、まずは和歌山県へ南下。その後、海岸沿いを反時計回りに進んでいきます。何度も “辞めようかな” と思う日があったそうですが、人との出会いや壮大な風景が背中を押してくれました。

なかでも、北海道では心に残る出会いがたくさんあったのだとか。宿がない地域では、地域の方々が「うちに泊まったら?」と声をかけてくれたり、3日連続でBBQに呼んでもらったり。

約1年半かけて日本一周を無事に走り終えたある日、「北海道でもマラソンに関する企画をやってみないか?」と声をかけられ、前田さんは再び北海道を訪れます。

現在、地域おこし協力隊として携わっている仕事内容は、ご当地グルメの開発やワインツーリズムの企画、空き家の利活用、そしてマラソンの企画など多岐に渡ります。

仁木町地域おこし協力隊Facebookページより拝借。

こちらが前田さんが開発した「旨み豚ワインバーガー」

仁木町のミニトマトやオーガニックワイン、そして隣接する余市町の豚肉。それぞれ素材はいいものなのに、地元で食べられる機会が少なく、そういった素材の良さを一口で味わってもらいたい! と考案。これまで2回ほどイベントで出店したそうですが、どちらもすぐに完売。

先ほど宮嶋さんが話していたように、北海道は豊富な生産地であるということを改めて思い出します。

現時点ではイベントのみの出店ですが、今後は空き家の利活用も交えて店舗をつくれないか検討中なのだとか。無償で提供してもらえる空き家も見つかり、少しずつプロジェクトが進んでいきます。

前田さんのように “走る楽しさを伝えたい” という自分自身がやりたいことや、“仁木町にあるいい食材を活かしたい” という地域資源の発掘など、様々な角度から地域との関わりをもつことで、地域で新たにシゴトをつくっていける可能性が広がるのかもしれません。

ゲストトークが終わったあとは、交流会。

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▲仁木町企画課の半田さん。

筆者が参加したグループには、“北海道あるある” を話す出身者や所縁のある参加者が集まっており、みなさんからは「北海道愛」がひしひしと伝わってきました。

「関西でイクラがこんなに高いとは思っていなくてびっくりした! 朝ごはんでよく食べたな〜」「小学校の体育はスキーかスケートどっちだった?」「除雪車に雪の壁を作られて家から出られない時あるよね。」「今は京都で家族と暮らしているけれど、出身者としていつか 北海道の冬の寒さを子どもに伝えたいな〜」などなど、お話は尽きません。

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最後は全体で円になってひと言ずつ感想を共有。

「いずれは札幌に戻ってまちづくりの仕事がしたいけれど、今は何ができるか正直わかりません・・」「地元である北海道は好きだけど、自分がやりたいことと北海道というキーワードを絡めるのは現時点では難しいなと思いました。でもいつかは地元に帰りたいです。」という若者からの生の声もありました。

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--いつか、地元に関わる仕事をしたい。

そんな風に考えている若者にとって、新たな選択肢を知るきっかけになった今回の「北海道もったいナイト」。

「このまちにはこれが足りていないな」「このまちのこんなところがもったいないな」というところから新たに仕事をつくっていく宮嶋さんや、ライターという仕事を通してまちとつながる北川さん、そして、地域おこし協力隊という仕事を通して新たにこのまちで働きはじめた前田さん。

様々な職業で地域に関わっているゲストの方々と出会うことで、若者の思い描く「いつか」が前よりも一歩、現在に近づいたのかもしれません。

 

--「学生のまち、京都」だからこそ。

学生や若者が、ゲストのみなさんのような「人」や、新たな角度から見た「地域」と出会えるきっかけを、私達は「Meets Local(ミツカル)」を通してつくっていきたいと思っています。

京都で地方をもりあげていきたい学生の方・若者のコミュニティづくりや京都での企画に興味のある自治体の方など、ミツカルについて興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

担当:株式会社ツナグム ミツカル担当 藤本 MAIL:info@tunagum.com

 

仁木町で1/19〜21に開催される「NIKIインキュベーションプログラム」をご紹介!

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「いつかは地元で何かしたい!」「何ができるかわからないけれどまずは地域へ行ってみたい!」NIKIインキュベーションプログラムは、そんなみなさんにオススメの企画です。

例えば、4〜10月に農業のシゴトを見つけたとして、あなたは残りの半年間をどのように過ごしますか? 仁木町では果樹栽培が盛んな一方で、規格外のものは市場に並びません。そんな「もったいない」果物をあなたならどのように活用しますか?

これらは宮嶋さんが話していたことのほんの一例ですが、そういった “シゴトづくり” に興味のある方はぜひ「NIKIインキュベーションプログラム」に参加してみてくださいね。仁木町にシゴトをひとつ持てる機会になるかもしれません。

参加申込みはコチラから。